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意外にも、事態は早く展開をした。 あの屋上にいたのが、10時過ぎ。 高野が気になっていた箇所を真山に話し、二人で気になるところをしらみつぶしに当たった。 幸い、事件関係者が全て近距離にまとまって住んでいたし、スムーズに証言を得ることが出来た。
決定的な証拠を掴んだのは4時過ぎ。 『関係ないとは思うんですが』と前置きして聞かされた証言が決定的だった。
本当に単純で、簡単な事件だった。 新人の研修生にもわかるほどの。
「こんなに簡単にわかっていいんですか?」 不安そうに高野が尋ねる。 「いいんじゃない?そんなもんでしょ。事件なんて」 あっさりと真山は言った。 すんなりと納得できてしまったのは、この男の発言だからなのか。
「あ、一応弐係に言っとかないとなんだよね」 「そうなんですか?」 「別に連絡しなくてもいいんだけどねー。あとで面倒くせえ事になるから」 「なるほど」 「あ、ケータイ持ってる?君」 「はい。使いますか?」 「悪いね」 高野から携帯を受け取り、真山は弐係に電話をした。
一通り話すと、真山は電源を切り、携帯を高野に返した。 「さ、犯人のところに行くよ〜」 やる気のない声だったが、気合が入っているだろう。 「あの、逮捕の手続きとかいいんですか・・・?」 「あ、ダイジョーブ。そういうのはね、一係の皆さんがやってくれるから」 「そんなんでいいんですか?」 「うん。そういうもん」
犯人(と高野が思った目撃者)の家に着いたのが5時ちょっと前。 少し緊張した高野が罪を暴き、真山はじっとそれを見ていた。 犯人には、妻がいた。妊娠中だった。 そのためか、保身の為か、なかなか罪を認めなかった。 高野が理詰めで応戦をする。 大学時代のディベートが大いに役に立ったといえるだろう。
けれど、最後に認めさせたのはやっぱり先輩の真山で。 高野が聞いていても痛くなるような言葉で追い詰めた。 丁度、一係の皆さんが来て犯人逮捕に至ったが、そのときの苦しそうな真山の顔が目に付いて離れなかった。
「ありがとうございました」 パドランプを見送りながら、高野が真山に頭を下げた。 「何が?」 真山は一刻も早く吸いたいと言いたげに、煙草を手に持っていた。 「やっぱり僕だけじゃ自供させるところまで行かなくって・・・」 新人だったが、それなりのプライドはあった。それでも、やっぱり無理だった。 多少の虚脱感が高野を襲う。 真山はその言葉にも答えず、何もフォローをしなかった。
大きく息を吸うのが聞こえる。 高野が隣を見ると、真山が煙草を咥えていた。 そしてただ一言、時計を見て呟いた。 「・・・もう、定時過ぎたな」 その言葉に、高野は返事が出来なかった。 |