ever after

 

 

 

「えっと、高野君でしたっけ?」

「はい。高野進と言います。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします。私は近藤といいます」

 

近藤が応接ソファに座り、軽く頭を下げた。

向き合っている男は、やる気に満ち溢れていそうな若者だった。

 

「今日からここで研修に来てもらうわけですけど・・・」

近藤が少し難しそうな顔をした。

「はい!」

高野と呼ばれた男が大きく返事をする。

 

「今、一係の応援を頼まれていましてね、皆出払っているんですよ」

「そうなんですか」

「私は、係長ではないのですが一応、高野君の指導係をさせていただきます」

「はい。よろしくお願いします」

 

近藤が、テーブルの上においてある資料を手に取った。

「高野君・・・東大出身ですよね?」

「はい」

「失礼ですけど、なにか…問題でも?」

近藤が尋ねる。

失礼な質問に聞こえたが、至極当然の質問にも聞こえる。

「はい?」

訳がわからなそうな高野に、近藤は慌てて咳払いをした。

「いえ・・・失礼しました。ええとですね、ウチの弐係というのは、継続事件専門の部署でして・・・」

「あ、はい。承知してます」

「そうですか?」

「はい。ここへの研修を希望したのは僕ですから」

「え・・・?本当ですか?」

「はい」

高野はにこにこと頷いた。

 

「僕が大学でお世話になった先生が教えてくれたんですよ。先生の教え子が弐係にいて、面白い仕事をしているって」

 

その発言を聞いて、近藤が納得したような、不可解そうな複雑な顔をした。

「東大といいますと・・・その教え子さんと言うのは」

「はい、柴田純さんです。是非お会いしたくて弐係を希望したんですけど・・・」

やる気まんまんな若者を見て、近藤が小さくため息をついた。

「そうですか・・・」

「どうして弐係なのかと何人かに尋ねられましたけど、話すのは初めてなんですよ」

「はぁ」

「父も警視庁で働いているもので、ちょっと融通を利かせてもらいました」

嬉しそうに高野が言う。

 

「・・・高野君」

静かに近藤が切り出した。

「はい」

彼の返事はやけに歯切れがいい。

本当はこんな所に研修に来る様な人物ではない。近藤はしみじみと思った。

 

「残念ですけど、柴田さんは今ここにはいません」

 

「本当ですか?」

「上に掛け合ったら、まだ研修先の変更は可能だと思いますけど・・・」

近藤が気の毒そうに言う。

「・・・いえ。折角ですのでここで頑張らせていただきます」

「そうですか?」

「継続事件にも興味が沸きましたし・・・構いませんか?」

「ええ。ウチは歓迎ですよ」

近藤が安心させるように笑顔を作る。

 

「あの・・・一ついいですか?」

「なんでしょう?高野君」

「柴田さんは、今どこに・・・?」

高野が尋ねると、近藤が不自然に眼鏡を人差し指で直した。

 

「そのうちわかりますよ。そのうち・・・」

 

その言葉の中の妙な緊張感に、高野はそれ以上何も聞けなかった。

 

 

 

 

 

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