| ゆめのなか
夜中に、ふと目が醒める。
悪い夢などみていない。 みていたのは、きっとしあわせな夢。
夢の続きを。 あるいは私のささやかな願望を。
音をたてずに、ゆっくりとあなたに近づく。 ゆっくりと、深い寝息。
これを聞くのは好きだけど、今はすこし物足りない。 眠ったままのあなたのからだに腕をまわす。 ぐるりと一周、は出来ないので片手だけで上からそっと。
あたたかい体温は私を少しづつ満たしてゆく。 わたしは目を閉じて、深い呼吸に合わせてゆく。
じわじわと私の中にあなたが浸透する。 ゆっくりと、深く。
ふんわりと優しいにおいがする。 あなたのにおいだと、すぐわかる。
これだけ一緒にいるのに、私はあなたと同じになれない。 だんだんあなたに似てくるような気がするけど、やっぱり違う。
あなたと一緒になりたくて、私は大きく息を吸う。 優しい香りと、深い寝息。 これだけ身につけたら、私にもあなたになれるかな?
でも、そうしたらあなたを感じられるものがまた一つ減ってしまう。
それはちょっと、やだな。
「・・・なにしてんの?」 「オナモミです」 「・・・・・・・・は?」 「知りません?オナモミ。植物なんですけど・・・」 「しってるよ。くっつき虫でしょ?」 「ご存知だったんですか」 「お前がなんでそれになりたいかは知らないけど」 「・・・ふふふ」 「なんだよ」 「よかった」 「なにが?」 「真山さんの声、聞きたかったんです」 「・・・早く寝ろ」 「はぁい」 「バカ・・・」 「え?」 「『バカ』って言わない?オナモミのこと」 「ああ。そういえば」 「お前にぴったりだね」 「ふふ。そうですか?」 「馬鹿・・・」
じわじわと、あなたの声が染みこんでいく。 きもちがよくて、やわらかくなる。 心の中が、ふわふわだ。
さっきみた夢は、きっと悲しい夢。 私の中だけのあなたは、本当のあなたにはとっても敵わないから。
ふわふわした私は、きっとまた悲しい夢をみる。 目が醒めたら、本当のあなた逢いたくなる、切ない夢を。 |