月まで一緒に

 

 

「柴田、柴田。その口笛やめて?」

「どうしてですか〜?いい歌なのに・・・」

「あのね、ここ飛行機の中。しかも出発前。皆様の迷惑でしょ?」

「・・・そうでした。スミマセン・・・」

 

「・・・真山さん」

「ん?な、何だよ?」

「顔色、悪いですよ。正露丸、出しましょうか?」

「いいよ!気のせいだよ、気のせい!お前の気のせい。俺、どっこも悪くないもん」

「でも、汗びっしょりですよ?」

「うるさいよ。俺のことはほっといて。な?いい加減一人の時間くれよ!」

 

柴田のスーパーコンピューター起動。

「解りました」

「何がだよ!」

「真山さん、さては飛行機がお嫌いですね?」

「・・・何で?」

「だって、そうとしか思えませんよ。その顔色。その汗」

「・・・お前平気なの?飛行機」

「はい。私大好きです。飛行機」

「どの辺が?」

「離陸する時の、あの魂がきゅーっとなる瞬間。あれ好きなんですよねー」

「え?マジ?やっぱおかしいよ、お前。俺、あれが駄目なの。気持ち悪くて」

「おかしいのは真山さんですよ。そんなに白い顔で脂汗かいてらっしゃるの真山さんだけですよ?」

「うるさいね!だから俺は飛行機が嫌って言ったの!それを聞かなかったのはお前でしょ?」

「だって、飛行機の方が目撃者の方に早くお会いできるんですよ?」

「引っ越すな!バカ目撃者!!」

「あ、真山さん事件に協力してくださる方に対して、失礼ですよ〜!係長は聞き逃さないぞ☆」

 

いつもなら、ここで鋭いつっこみが飛んでくるのだが、今の真山にはその元気すらなさそうだ。

 

「・・・真山さん、そんなにお嫌いなんですか?飛行機」

「ああ。だってさ、鉄の塊が空飛ぶんだぜ?わかんねーよ。仕組み」

「なんなら、ここでご説明しますけど?」

「いい!余計気分悪くなりそう。マジで」

「・・・そうですか。残念です」

「それに禁煙だし〜。地獄だよ。地獄」

「あ、真山さん。いい事思いつきました」

「何?あ、飛行機やめて弐係に帰るとか?」

「そうじゃありません。・・・よろしければ、私が手を握ってて差し上げましょうか?」

ぱしん。真山渾身の一発。

「いった〜。何で叩くんですか〜?」

「馬鹿?お前馬鹿?どうして俺がお前なんかに手、握っててもらわなくちゃいけないの?それのどこがいい事なの?ねぇ?馬鹿?」

「もー、そんなに馬鹿馬鹿言わないで下さいよ〜。・・・いい考えだと思ったんだけどな・・・」

「却下。当たり前でしょ?握るならもっと綺麗なオネーチャンの手を・・・うお!」

 

「只今、当機は離陸体制に入りました。」

 

「来たよ!来たよ!うわー柴田、どーしよー?」

「どうも出来ませんよ。静かにしててください、真山さん。」

「うわ、来るよ!来るよ!走ってるよ!柴田、お前止めてきてよ。柴田〜!」

「真山さん、落ち着いてください。どうどう」

「馬扱いすんじゃねぇ!やめてぇ〜!!こないでぇ〜!!」

「もう、真山さん!」

 

 

「・・・真山さん」

「なんだよ!」

「綺麗なおねえさんの手を握るんじゃ、なかったんですか?」

「うるさいね、代理だよ!代理。ちょっと貸せ」

「・・・どうぞ。」

 

「真山さん」

「ん?」

「このまま、月まで行けそうですね?」

「は?月?」

「はい。ずっと手を握ってたら、月まで一緒に行ってくれますか?」

「なんだよそれ?さっきから」

「ふふ、気にしないで下さい。」

「・・・変なヤツ」

「あのですね、『大好きです』って言ったんですよ?」