つきあかり
もう、かなり肌寒い。 夜中、俺は寒さで目が覚めてしまった。
毛布に包まり、体を丸くする。 先ほどよりも少し、あたたかい。 ほっと一息をつくと、そういえば隣に柴田がいないことに気がついた。 確かに、柴田は昨夜泊まったはずだ。 便所か・・・? 寒いので、首だけを毛布から出して、辺りを見回す。
柴田は、窓側にいた。 後ろから見る横顔は、月明かりに照らされて暗い部屋に白く浮き上がっていた。 とても綺麗で儚く見えた。
それは、俺の知らない女のようで。 俺の胸に不安が過ぎった。
毛布を持ち、ベッドを下りて窓際の柴田に近づく。 柴田の真後ろに座ると、毛布ごと柴田を抱きしめた。 驚いた柴田が、こちらを振り返った。 「・・・ビックリしました」 柴田の肩に顎を乗せる。 「冷たくなってんじゃん。風邪ひくよ?」 掌で、柴田の腕をなぞる。
体温でさえも、俺の知らない女のようだ。 首筋に激しく口付けし、紅い痕を付けた。 「・・・真山さん?」 柴田がどこか怯えたような声を出した。 「お前、何してたの?」 「・・・えっと、ちょっと気になる事件がありまして・・・」 手を動かすと、柴田の膝の上に調書が置いてあるのがわかった。 「こんな時間に?」 「ずっと気になって・・・眠れなかったんです」 「ずっと・・・?」 「はい。これがなかなかの難事件なんですよ」 「柴田」 「真山さんも気になります?明日一緒に捜査に・・・」 「柴田」 柴田の言葉を遮るように、少し強めの口調で名前を呼ぶ。
「俺とセックスしてる時も、そのこと考えてたのか?」
「真山さん?」 いつもと違う俺に柴田が戸惑っている。 俺は、強引に柴田にキスをした。 そして、その場に押し倒す。 首筋に、耳に、顎にキスをした。 「・・・真山さん?」
戸惑ってるのは、柴田よりも俺の方だった。 いつも知ってる、全てを知ってると思った柴田が別の女に見えただけなのに。 それが柴田の一部であるならば、その女すら自分のものにしたい。 手も、足も、顔も、頭の中も。 ・・・そして、心も。
けれども、こうして見下ろしている柴田は、いつもの柴田で。 俺に怯えながらも、一生懸命それに応えようとしてくれる、いつもの柴田。 柴田を恐がらせてしまったことに少し後悔して、 それでも、あとから湧き上がってくるのは、女への激しい想い。
優しく髪を撫で、そのまま頭にキスをする。 柴田が、恐る恐る背中に手をまわしてきた。 「・・・どうしたんですか?真山さん」 「・・・何でもねぇよ」 「でも・・・」 「・・・ごちゃごちゃうるせぇなぁ」 そう言って俺は少し笑ってもう一度、柴田にキスをした。 今度は、甘いキスを。
やはり毛布がないと肌寒くて、少し身震いする。 「・・・やっぱ風邪引くから寝るわ」 俺は毛布を持って立ち上がった。 「え?じゃあ私も・・・」 柴田が名残惜しそうな顔で俺を見上げる。 「お前はあれだろ?難事件があるんでしょ?頑張ってね〜」 ニヤニヤと柴田を見下ろす。 「え?でも・・・そろそろ・・・」 「気になって眠れないんでしょ?さすがだね、カカリチョー」 毛布を持って、ベッドに向かう。 「真山さん、一人で寝るの寂しいでしょ?ね?」 柴田が、俺の後をとたとたと追いかけてきた。 「別に?おやすみ〜」 われながらうそ臭い笑顔を作って、ベッドに横になった。
「・・・真山さ〜ん」 柴田が俺の体を揺らす。 「寒いんですけど・・・」 柴田が大袈裟に身震いをした。 「眠いなー。あ〜あ。眠たいな〜」 「・・・それだけ?」 「え?」 「お前、俺にくっついていたいんでしょ?」 「う・・・」 図星らしい。 「本当の事言ったら入れてやってもいいけど?」
「・・・真山さんとくっついてたい・・・です」
「どうぞ?」 毛布の片側を上げて、柴田の場所を空ける。 「・・・ありがとうございます」 柴田は、恥ずかしそうに入って来ると、俺にきゅっと抱きついた。 「ふう〜・・・やっぱり、落ち着きますね。ここ」 「そう?」 「はい。真山さんのとなりがいちばんいいです」 素直にそう言ってくれる柴田の可愛さに少し、笑った。 |