お休みの日

 

 

 

今日は、有給を取った。

久しぶりに、一人でいる休日。

お昼近くまでゆっくりと眠って、おうちでのんびりしよう。

そう決めていた。

 

そう決めていたのに。

目が覚めたのは、まだ8時。

いつもより早かった。

もう一回眠ろうとしてけれど、もう目が冴えてしまって眠れそうもない。

仕方なく、パジャマから普段着に着替えた。

 

「あら、珍しい。今日はお休みにしたんじゃなかったの?」

ダイニングから母の声が聞こえた。

「…うん。そうなんだけど、なんだか目が冴えちゃって…」

「ふふ。お仕事があるときはなかなか起きてこないのに、変な子ねぇ。朝ごはん、食べるでしょう?」

「うん。お願い」

「はいはい。今日は純の好きなしじみのお味噌汁があるわよ」

「本当?わー、嬉しいなー」

ゆっくりと椅子に座ると、母があたたかいご飯とお味噌汁を出してくれた。

「いただきまーす」

お味噌汁を一口飲むと、心がほっこりとした。

「あー、おいし。やっぱり朝からお味噌汁飲むと、落ち着くね」

私のその一言に母が、鮭の塩焼きとほうれんそうのおひたしをテーブルに並べながら、くすくす笑う。

「…なあに?」

私は少し不機嫌になりながら、母に訊いた。

「あなたが朝ごはん食べるのを見るの、久しぶりだわ」

「そうだっけ?」

「そうよー。あなた朝はいっつも寝坊してるし、そうじゃなくてもご飯あんまり食べないでしょ?」

「そういわれれば、そうか…」

「それに、最近お休みの日はウチにいないし」

 

そうか。この広いダイニングで、母はいつも一人で食事を取っているんだ。

なんだかすごく親不孝をしている気分になった。

「…ごめんなさい。お休みにいつも日に家にいなくって…」

「あ、違うのよ、純。別にあなたを責めているんじゃないの。

あなたはもう大人なんだし、悪いことをしている訳じゃない、そうでしょう?」

「うん。悪いことじゃないと思う。真山さんと一緒にいたいだけだもん」

「そう…。純ももう立派な一人の『女』なのね…」

母が嬉しそうに目を細めて笑った。

 

 

「ねぇ、真山さんは優しい?」

「…どうかな?いつもいっぱい叩かれてるけど、やっぱり、優しい…かな?」

「ふふ。いいわねぇ」

「本当はね、全然優しくないの。でも、たまーにすごく優しいからそれに騙されちゃうの」

「悪い人ね、真山さんって」

「そう、すごい悪い人。…なんであんな人が好きなんだろうってたまに思うくらい」

「…なんで真山さんの事がすきなの?」

「…わからない、けど…」

「なぁに?」

「多分、そうなる運命だったの。こんな気持ち、言葉では説明できない」

「そう。」

母はそういって、お茶をこくんと飲んだ。

 

 

「いつか…会えるかしら?」

母が、湯飲みをテーブルに静かに置いて静かに言った。

「いつか、真山さんに会わせて貰えるかしら?」

「…うん。そのうち、ちゃんとお母さんにも紹介するね」

「お願いね。ちゃんとお会いしたいわ」

「…何か、言いたいことでもあるの?」

「そうね…」

母がいたずらっぽく微笑んだ。

「怒鳴ってやろうかしら?ウチの娘をとりやがってー、って?」

「やめてよ」

「…冗談よ。本当はね、お礼が言いたいの」

「お礼って、何のお礼?」

「娘を、命がけで護ってくれて、愛してくれてありがとうって」

「…何か変だよ、お母さん」

「そう?いいじゃない。お母さんがそう言いたいんだから」

「真山さん、どんな反応するのかな?」

「そうね、どんな反応するか気になるわね」

ふふふと二人で笑いあった。

 

「そういえば、どうしてあなた今日はお家にいるの?」

母が、食事が終わった私のために、お茶を淹れてくれながら言った。

「え?どうしてって、お休みだから…」

「お休みの日は、真山さんのおうちに行くんじゃないの?」

「だって、真山さん今日お仕事だもん」

「あら、珍しい。お休みいつも合わせてたじゃない」

「うん、そうなんだけどね…」

母が不思議そうな顔で私の顔を覗き込む。

「けんかでもしたの?」

「そうじゃないよ」

私はそう言って笑ったが、あまり顔が笑っていなかったのが自分でもわかった。

 

「最近、私立て続けにいくつもの事件を解決したでしょう?」

「そういえば、ここのところ、ずっと休みなく働いていたんじゃないの?」

「そうなの。…私は別に休みなんてなくても構わないんだけど、真山さんが…」

「いつも純の面倒見てくれているんですものね。彼も休みがなかったんだ?」

「そう。だから私が休めば、真山さんものんびりできるんじゃないかなって」

「それで今日あなた休んだの?」

「うん。…やっぱり真山さんに休んでもらえばよかったかなぁ?」

「そうね。なんだかおかしいわ」

母がクスリと笑った。

 

「あなたは、休みなくてもよかったの?」

「…うん。仕事って言っても、毎日真山さんと一緒だったし、休みで真山さんに会えないほうが辛いなぁ」

「…それは、真山さんも同じだと母さん思うけどな」

「え?」

「仕事で毎日大変よりも、暇なのに純に会えないほうが真山さんも辛いんじゃないかしら?」

「…そうかな?」

「そうだと思わない?純」

「そうだといいなぁ」

 

「あー!なんか元気が出た!ありがとう、お母さん」

「どういたしまして。これでもお母さん、女の先輩ですからね。純の気持ち、よくわかるのよ」

「えへへ。夜になったら真山さんのお家、行ってみるね」

「そうしなさい。純が会いたいと思ってるときは、きっと真山さんも純に会いたがってる。そう思えば少しは寂しくないから」

「うん!!」

 

 

 

お休みの日。

「ひとりでのんびり」もいいけれど、

やっぱりあなたと一緒がいいわ。

 

仕事は休みにできるけれど、

この想いに休みはないの。

 

今日も明日もあさっても

あなたが好きで、

今日も明日もあさっても

あなたに会いたい。

 

あなたはそんな風に思ってくれているかしら?

ねぇ?真山さん