オトコとオンナ
「ねー、真山さん」 「んー?」 「・・・私のこと、好きですか?」 「何言ってんの?くだらない」 「くだらなくなんてないですよー!大事なことです。とても」
何度か身体を重ねていて、それなりの関係になっているはずなのに、 男は、未だに女に何も云わない。
女にとって、それは十分不安の種であった。
「私は・・・す、すす好きですよ?真山さんのこと」 「顔赤いよ?」 男がニヤニヤと意地悪く笑いながら女の髪を撫でる。 そんな男の態度が腹立たしくて、でもとても丁寧に撫でてくれるから、女は何も言えなくなってしまう。 そんなところも、好きだから。
「真山さん・・・」 「何だよ」 「じゃあ、私のこと嫌いなんですか?」 「・・・なんでそうなるの?」 「だって・・・好きじゃないってことは・・・そういうことですよね?」
男が、大袈裟にため息をついた。 伏せられた睫毛はとても長くて、女はしばしそれに見とれた。
「お前さぁ・・・」 「そんな顔、しないで下さい」 「え?」 「面倒臭そうな顔、しないで下さい・・・」 「・・・・俺、してた?」 「はい。してました」
「だって、面倒臭いんだもん」 「・・・真山さん・・・」 「知らなかった?お前は面倒臭い女なの。臭いし、刑事魂だし、しつこいし・・・」 「酷いです・・・」
「でもさ」 男が寝返りをうった。 同じベッドの上で、女を少し上から見下ろす格好になる。 きめ細かい女の頬を、長い指で弄ぶ様に触れる。 その仕草に、女の体温が上がる。 自分の上がっていく体温とは逆の冷たいままの男の指を少し、恨めしく思った。
「面倒臭いけど、手放そうと思ったことはないよ」
女は男の喉仏が上下する様をじっと見ていた。 「・・・それって、私が好きってことですか?」 少しの間があって、女が口を開いた。 「さあね。お前推理得意なんでしょ?考えてみれば?」 男がまた意地悪く笑う。
女が欲しがるものを、男はいつも与えない。 けれど、そう思っているのは女だけで、男はいつも与えているらしい。 とてもわかりにくいけれども、確実に。
そう、例えばあの意地悪そうな笑顔だって、女に対する告白であると。 そして、それに気付かない女を愛しいと思っていることも。
全ては、口に出さないけれど、確実に。 |