いつものメリークリスマス

 

 

 

 

12月23日(祝)

柴田、久しぶりに単独捜査。

祝日のため、真山が捜査に行くのを拒否した模様。

一日かけて、事件現場にたどり着く。

 

 

12月24日

 

午前8時20分

真山、警視庁に登庁。

 

午前10時28分

彩、柴田の携帯電話に電話(一回目)

応答なし。

 

午前11時43分

彩、柴田の携帯電話に電話(二回目)

応答なし。

 

午後1時52分

彩、柴田の携帯電話に電話(三回目)

応答なし。

 

午後2時35分

真山、警視庁を出発。

 

午後3時49分

真山、睡眠中の柴田を捜査中の事件現場にて発見、保護。

 

午後4時16分

柴田と真山、事件の第一発見者の元を尋ねる。

 

午後4時47分

事件の第一発見者、事件の被疑者として緊急逮捕。

捜査一課によって警視庁に連行される。

 

午後5時20分

柴田と真山、警視庁着。

 

午後6時43分

捜査書類の作成、提出。

真山と柴田、警視庁を出る。

 

午後7時08分

真山と柴田、定食屋にて夕食。

 

午後8時12分

柴田、コンビニにてシュークリーム二個(うち一個は真山の分)を購入。

 

午後8時30分

真山と柴田、真山のマンションに帰宅。

 

午後8時46分

入浴。

 

午後9時08分

性交。

 

午後10時40分

現在に至る。

 

 

真山は、柴田をベッドの壁側に押しやって、自分はベッドの淵に座り煙草をふかしていた。

柴田は、毛布に包まってうとうとしている。

いつもの二人の光景だった。

 

真山はセックスのあと、よく煙草を吸っていた。

柴田がどうしてかと尋ねると、運動した後はヤニを吸いたくなるんだよ、と当たり前のように言った。

確かに、柴田が真山に出会う前に想像していたセックスよりも、実際に行うセックスはずっと体力が必要で、終わった後などは酷く疲れる。

だから、私はすぐ寝ちゃうんですかねと真山に言ったら、それはお前が何回もイっちゃうからだとからかわれた。

・・・自分がそうさせているくせに。

 

ピリリリと静かな部屋にけたたましく柴田の携帯電話の着信音が響いた。

「鳴ってるよ?」

真山がぼそりと呟く。

柴田は、やっと眠ろうとしたところで思うように目が開かず「んー」とだけ言って、真山の背中をつついた。

真山が柴田の方を少し振り向くと、本当に眠そうだったのでしょうがないと充電器に立ててある柴田の携帯を取りに行った。

「『メール受信しました』だって」

もう随分古くなった携帯のディスプレイを見て真山が言う。

柴田がその声にかすかに瞼を開けて、真山の方を見る。

「ほらよ」

真山が携帯を投げる。

携帯は綺麗な弧を描いて、そして柴田の顔面に着地した。

「いひゃい」

柴田が声を発したのは、顔に当たった携帯がずるずると枕に落ちたあとだった。

「お陰で目、覚めたでしょ?」

真山がよいしょとまたベッドに腰掛けた。

柴田はそれに答えず、うつ伏せのまま携帯電話をいじっていたが真山は特にむっとした様子もなく、また煙草を咥えた。

「あ、彩さんからだ」

顎を枕に沈めたまま柴田が言ったので、声がすこし篭もっていた。

「お前、今日木戸が何回も電話してたのに出なかったでしょ?それでじゃない?」

真山が柴田の方を振り向いた。

「ですからー、電池が切れてたんですってば」

「人ん家に充電器置いて帰るからだよ、馬鹿」

「だって、最近自分のうち帰らないから・・・」

「ちいさいんだからさ、持ち歩けば?あの四次元ポケットの中に入れて」

「今度からはそうします」

「ん」

 

あかりのついていない暗い部屋の中で、携帯の画面のライトが眩しい。

「・・・あ」

柴田が何か思い出したように呟いた。

「どうした?」

真山がもう一度、柴田のほうを振り向く。

「あ〜!!!」

柴田が急に大きな声を出して飛び起きた。

 

「真山さん、今日24日ですよ!!12月24日、クリスマスイブです!!」

「それで?」

「え?真山さん、気付いてたんですか?教えて下さいよ〜!!意地悪〜!!」

「普通、わかるでしょ?日付くらい」

「私、今気付きました〜。彩さんがメリークリスマスのメール下さらなかったら、きっと気づかないままでした〜」

「木戸、余計なことしやがって・・・」

「あーあ、どうして気付かなかったんだろう・・・私」

「別にいいじゃん」

「良くないですよ〜。折角のクリスマスがー!!」

柴田は携帯を握り締めて、しゅんとうなだれた。

真山はそんな柴田を見て、小さくため息をつくと露になっている肩に毛布をかけてやった。

 

「・・・色々ね、考えていたんですよ。真山さんとのクリスマス」

「へぇ」

真山が咥えてた煙草を指に挟んで、煙を吐き出した。

 

「例えば?」

「例えば、ですか?・・・え〜っと、ケーキ買ったり・・・」

「シュークリーム買ったじゃん。イチゴの入ったやつ」

 

「豪華なディナー食べたり・・・」

「今日の定食屋、うまかったじゃん。いつものとこよりちょっと高かったし」

 

「こう・・・愛を語り合ったり」

「セックスしたじゃん。それじゃダメなの?」

 

「とにかく、なんていうかロマンチックに過ごしたかったんですよ〜」

「・・・ふうん」

 

真山は興味なさそうに呟くと、短くなった煙草を灰皿に押し付け柴田の方を向いた。

「お前さ、死ぬほど好きな男が隣にいて、これ以上何を望むんだよ?」

その言葉に、柴田はどきりとした。

 

真山は唇だけで柴田に触れた。

柴田の唇を咥えるように。

 

真山が一瞬で唇を離すと、暗闇の中、柴田の瞳だけがキラキラと輝いていた。

柴田の瞳が潤んで、それが月明かりを反射してるのだ。

 

それを見て、真山はふっと笑うと今度は柴田の首に手を添え、今度はゆっくりとキスをした。

息をつくのをも忘れるくらいの、長くて甘いキス。

 

 

「・・・ロマンチックだろ?」

キスの後、そう言ってにやりと笑う真山に、柴田は何も言えなかった。

 

 

 

「特別なことは何もないけれど、

あなたがとなりにいてくれる。」

 

それが、どんなに特別で、どんなに愛しいものかを知っているから。

 

 

奇跡みたいないつもの日常に、感謝して。

 

いつもの二人で、メリークリスマス。