キス
私たちの間には、一つの約束がある。 口に出した事はない。確認しあった事はない。 けれども、私達だけが知っている秘密の約束。
以前、ある事件を解決した時、私は酷く落ち込んだ。 いつものような後味の悪い事件。 けれども私の落ち込みはいつもより深く、真山さんがいくら叩いても、蹴っても、つねってもその落ち込みは治らなかった。
真山さんは困った顔で私を物陰に連れて行って、キスを一つくれた。 いつもの様な深い,激しいキスではなく、親が子供をあやすような優しい、穏やかなキス。
それ以来、私は事件を一つ解決する度にキスをねだる。 その時以外、私はキスをねだる事はないし、もしキスをねだったとしても、真山さんはそれに応じてはくれないだろう。
けれど、この時は別。 私は当然のようにキスをねだり、真山さんも必ずキスをしてくれる。 それが例え、外でも人が見ていようとも。
これが、私の小さな楽しみ。 これが、私たちの小さな秘密。 |