記憶

 

 

私はとても大事なものを取り戻した。

 

それは、あなたとの記憶。

 

短いけれど、とても愛しい記憶たち。

 

 

何故、忘れていたのか、わからない。

忘れられるものではないはずなのに。

 

あなたの声も、手も、髪も。

こんなにも、私の心を乱すのに。

 

あなたを忘れて、どうやって生きていたのだろう?

 

 

そしてまた、

私はとても大切なものを失いかけた。

 

それは、あなた。

 

とても、とても、大切なひと。

 

私をかばって、傷を負った、あなた。

どうしてですか?

あなたのことを忘れた薄情な女のことなんて見捨てればよかったのに。

 

それなのに、あなたは笑っていた。

子供のように、嬉しそうに。

 

「やっと、逢えたな」

 

そう言われた気がした。

 

あなたの手が、私の髪に触れて。

何度も、何度も撫でてくれた。

まるで、私のことを確認するかのように。

 

「お前、相変わらず、頭くさいよ?」

 

お決まりのように、あなたが言った。

私は、笑おうとしたけれど上手く笑えなかった。

笑ったら、気持ちが溢れて、どうにかなりそうだったから。

 

 

あなたは、忘れろといった。

そんなことは出来るはずがない。

あなたとの思い出は、どんな悪夢でも私にとって宝物だから。

 

もしも、忘れろというなら、

私の全てを消して。

 

あなたがいないわたしなんて、いないほうがいい。

あなたがいないわたしなんて、意味なんてない。

 

最期の力を振り絞って、わたしに触れているあなたを、忘れるなんて出来ない。

 

 

言いたいことは、沢山あるのに。

伝えたいことも、沢山あるのに。

 

わたしは、壊れたおもちゃのようにただ、あなたの名前を繰り返すだけ。

 

真山さん、真山さん、真山さん。

 

返事をして。

また笑って。

頭臭いよって、もう一度言って。

 

 

涙が、とめどなく溢れてくる。

もっと、あなたの顔を見たいのに。

あなたの全てを、こころに焼き付けていたいのに。

涙のせいで、あなたがよく見えないの。

 

真山さん、真山さん、真山さん。

 

こんなわたしを叱って。

いつもみたいに叩いて。

もう一度、キスをして。

 

 

涙は、とどまることを知らず。

悲しみは、後から後から流れてくる。

 

けれども、この悲しみさえも、

あなたを愛した記憶となる。

 

たとえ、あなたがいなくなっても、

その記憶は、わたしの中で生き続ける。

 

あなたは、わたしの中で永遠に。

ずっと、一緒に―