本能〜真山〜 

 

 

「あんたってオンナに執着心ないよね」

いつか、売女に言われた言葉。

 

自分でも自覚はあった。

もう唯一の肉親であった妹をなくしてから、俺は全てに執着をしなくなった。

―朝倉裕人―ヤツへの執着を除いては。

だから、彼女の言ったことに反論はなかった。

 

けれど、お前に出会って、知ってしまった。

自分の中にまだわずかに残っていたこの想い。

お前だけを必死に守っている自分は紛れもなく執着心の塊で。

みっともないとあの売女は笑うだろう。

 

けれども、俺は笑われても構わない。

みっともなくても、情けなくてもこいつが生きていればそれでいい。

それだけのために俺は生きてきたんだ。

生きて、動くお前をこの目でしっかりと見届ける為に。

 

「ねぇ、真山さん」

「ん?」

「・・・もし、私が死んじゃったらどうします?」

「・・・さぁ」

「え?死んじゃうんですよ?いなくなっちゃうんですよ?」

「その時になってみないとねぇ。何、不満?」

「不満・・・って言うか・・・悲しいです」

私はきっと真山さんが死んじゃったら、悲しくて悲しくてどうにかなっちゃうと思いますから」

「へぇ。悲しんでくれるんだ。一応」

「当たり前じゃないですか!だってもうあんな思い・・・嫌です」

「・・・俺だってヤダよ」

「あ、そっか」

「おまえやっぱり暗いね。そんな縁起悪い事考えんじゃないよ!馬鹿」

「・・・私はきっと真山さんがいなかったら生きていけないんです。人生最大の執着心ですよね。これって」

「ふぅん。執着ねぇ・・・」

「真山さんはどうなんですか?私がいなくても生きていけますか?」

「さぁね。・・・お前はどう思う?」

「・・・真山さんには生きていて欲しいです。私が死んだあとも」

「何それ?俺はだめなの?お前に執着したら。ねぇ?」

「・・・執着してくださってるんですか?」

「うん。お前と同じ程度にはね」

「え?本当ですか?」

「まあねー。嬉しい?」

「はい。抱きつきたくなりますねぇ」

「・・・どうぞ?」

 

今のは、ほんのちょっと嘘。

俺の、お前に対する執着はいわば俺のこれからの人生の全てで。

きっと、お前の想いよりずっとずっと、重くて切実なんだ。

「お前なしでは生きていけない」

陳腐で、ありふれた口説き文句。

こんなこと、面と向かっては言えないけれど。

お前も同じ気持ちでいてくれるのは、ちょっとだけ。いや、すごく幸せ。