花より・・・

 

 

今日は、弐係でお花見の予定。

しかし、それはあと4時間後のこと。

柴田と真山は、その会場に早くもいた。

そう、彼らには「場所取り」という大切な任務が与えられているのである。

 

大きな桜の木の下。

そこに場所を決めた。

柴田のカバンに入れてきた、青いレジャーシートを広げる。

柴田の靴と真山の靴で四方を抑えた。

さあ、これで準備は万端。あとはこの場所でじっとしていればよい。

空は青いし、風が気持ちいい。

少し、下がゴツゴツしている事を除けは、そこは十分な休憩場所であった。

 

柴田は、カバンの中から本を取り出す。

「あれ?珍しい。調書じゃないの?」

「はい。うっかり調書を読んで捜査に行きたくなったら困るだろうからって、彩さんが助言下さいまして」

「たまにはいい事いうじゃん、木戸も」

「真山さん、失礼ですよ」

はいはいといい加減に返事をして、真山は胸ポケットから煙草を取り出す。

 

「柴田、見て見て。ほら」

「なんですか?」

「ほら、煙」

「あ、すご〜い。煙がわっかになってる〜!!

ふふん、と真山が得意げに笑う。

「コツさえ掴めば簡単なんだけどね〜」

「・・・私にも出来ますか?」

「・・・煙草吸えるの?」

「いえ・・・」

「じゃあ無理。常識で考えれば、わかるでしょ?」

「え〜?」

柴田が、つまらなそうに口を尖らせた。

それを横目に、真山がもう一度、煙を輪にして吐き出した。

 

煙は、澄んだ青空の下に吸い込まれるように、高く、高く上がっていく。

柴田も真山も、それをぼんやりと見ていた。

 

 

「なんだか、この煙の輪っか。天使の輪みたいですね?」

柴田が、すこし微笑んで言った。

「天使?」

「はい。真山さんが天使みたいに見えます」

「俺が天使、ねぇ・・・」

あまりの似合わなさに真山が苦笑する。

 

ついこの間まで復讐鬼だったのに。

この女は、俺に希望を与え、生を与え、その上羽根まで与えてくれるというのだろうか?

本当に、変な女。

けれども、愛しい女。

 

真山はもう一度、煙草を咥えた。

そしてまた、わっかを作る。

今度は、柴田の頭上に。

 

「ほら、おすそ分け」

「わー。私も天使さんみたいですか?」

それには答えず、真山はすこし笑った。

 

「柴田、俺眠いんだけど」

「あ、じゃあ横になって下さい。どきますね。」

「じゃなくってさ。」

「はい?」

「ここで寝たら、頭痛いと思わない?」

「えっとじゃあ、なんか枕代わりになるもの・・・」

「あるじゃん、そこに」

「え?どれですか?」

「お前のひざ」

「えっ!?」

 

そういった後の、柴田の顔が

見上げた桜よりも赤かった。

 

花よりも、この女を愛でようか?