艶色
俺しか知らない顔がある。
この何も知らなさそうな、純粋そうな女が持っているもう一つの顔。
吐息は、驚くほど熱を帯び。 喘ぐ声は、どこまでも甘い。
薄く開かれた唇は、目に焼きつくほどの紅さで。 名前を呼ばれるだけで、心臓を掴まれたような気分になる。 顔にかかる髪の毛さえも、扇情的に俺を支配する。
背中にまわされた白い腕はもどかしそうに俺を掴む。 立てられた爪に痛みよりも興奮を覚えた。
「・・・柴田・・・」 名を呼んでやると、閉じられた瞼がゆっくりと開かれる。 頬に影をつくる長い睫毛が徐々に上がっていくのを見つめた。
一瞬。 いつも真実を映している柴田の目が妖しく俺を捉える。 普段とは対極にあるような、誘う柴田の瞳。
熱と、憂いと、欲と。 言葉にするのが苦手なお前がその全てを表現する一瞬の瞳。
その瞳で見つめられるたびに、何かが生まれ、何かが壊れるような気分になる。
「・・・真山さん・・・?」 一瞬で柴田の瞳が元の澄んだ瞳に戻る。 俺は何も答えず、瞼に自分の唇を落とした。 「・・・どうかしました・・・?」 俺を心配するような柴田の声に少し笑って、なんでもないと首を振った。
背中にあった柴田の手が、俺の頬に触れる。 細い指が、柔らかく俺の唇をなぞった。
また、俺の熱が上がる。
「ちゃんと知ってんじゃん。男の誘い方」 誤魔化すようにふざけて言うと、柴田が妖しく笑った。 「・・・みたいですね。本能が、教えてくれました」 その答えに、導かれてるのは俺のような気がした。
それもきっと、悪くない。
柴田の指に誘われるままに、また唇を落とす。 迎え入れる唇が、かすかに笑っている気がした。
さぁ、次は何をして遊ぼうか?
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