よん:セオリー
「なぁー、柴田。どっかにええ男おらん?」 「え?どうしたんですか?彩さん」 「どーもこーもないわ。最近渇いてんのよ、アタシ」 「え?彩さんのどこが乾いてるんですか?」 ぱしっ 柴田の頭を真山の手刀が襲った。 「いったぁ〜い・・・もう、何するんですかぁー真山さん」 「・・・木戸、変なこと吹き込まないでくれる?」 柴田の問には答えず、真山は彩を軽く睨んだ。 「えーやん。過保護やなぁ、真山さん」 「だから何が乾いて・・・」 「うるさいよ」 「あー、あれやあれ。人生が乾いてるっちゅーことやな」 「・・・なるほど。あれ?どうして私叩かれなきゃいけなかったんでしょうか?」 「馬鹿。考えるな、馬鹿」 「もー、真山さん理由なく私をばしーって叩くのやめて下さいー」 「お前の馬鹿が治ったらね」 きゃっきゃと本人たちは自覚なくいちゃついているのを見て、彩はつまらなそうにため息をついた。
「なー、なー、あんたたちもよぉ考えると平凡やな」 「・・・何が?」 「だって、『研修で来た新人とその指導員』がデキたんやろ?なんか定番。べったべたやんか」 「えー?だめですかぁー?」 「ってかさ、いつ誰と誰がデキたの?」 「なんか面白ないやん。もっと意外な線狙おうや」 「意外な線・・・といいますと?」 「だからさ、誰か否定しようよ。誰もデキてないじゃん。ねぇ、聞いてる?」 「そーやなぁー・・・柴田、アンタは弐係の男連中全員咥え込むっちゅーのはどうや?」 「咥え込む、ですか?・・・彩さん、もう少し詳しくお願いしま・・・いたっ」 「何メモ取ってんの?やめろって警察手帳に書くのだけはさ」 「ええか?柴田。時代は『悪女』や。男を惑わし弄ぶ悪女。どうや?かっこええやろ?」 「・・・悪女・・・なんか、ミステリアスな響き・・・」 「だから木戸さー、この単純馬鹿に変なこと教えんなって。何でも鵜呑みにするから」 「ええか?ここからが実践編や。よお聞き、柴田」 「はい!」 「ね、あれでしょ?お前らわかってて無視してるでしょ。いじめ?ね、いじめ?」 「まずは、唇は半開き」 「・・・こうですか?」 「やんなよ」 「でなー、舌をちょっと出すんや」 「うー・・・こう、ですかー」 「ぶぶっ」 「そうそう。で、目をちょっとダルそうに・・・そうそう。上手いやん」 「これってかわいいですかー?」 「ひゃっひゃっひゃ。馬鹿、馬鹿柴田・・・腹痛ぇ〜!!」 「上出来や。・・・さ、早速引っ掛けにいくか?」 「え?引っ掛けると言いますと・・・?」 「?」 「悪女実践編や。・・・まずは、元係長のおっさんから行くでー、柴田」 「はい?」
「みーやびちゃんテレフォンだ リンリンリン♪」 「・・・今時ミニモニテレフォンって・・・さ、頑張って行き、柴田」 「はい!柴田純、悪女への第一歩を今踏みしめます!!」 「頑張りや〜・・・って、なんであんたまでおるねん、真山さん」 「・・・いいじゃん。見学だよ、見学」 「・・・やっぱり過保護やな」
「野々村係長待遇!」 「ん?どうしたんだね?柴田君」 「・・・えーっと・・・ですね。唇と舌と・・・目か」 「柴田君?」 「・・・これってかわいいですか〜?」 「し、柴田君?どこか具合でも悪いのかい?君に何かあったらぼくは君のご尊父に・・・」
「失敗しました・・・」 「まー、しゃあないな。おっさん、熱愛中やから・・・」 「当たり前じゃん。クソ汚え柴田がピッチピチの女子高生にかなう訳ねぇって」 「・・・安心してるんやろ?」 「何で?」 「・・・まぁ、ええや。じゃあ次、近藤さんや!」 「柴田純、今度こそは必ずや殿方のハートを鷲掴みにして見せます!!」 「・・・真山さん、心配?」 「何で?」 「ま、えーけど」
「近藤さん、ちょっとよろしいですか?」 「あ、柴田さん。今ちょっと・・・手が離せなくって・・・申し訳ありませんが少し待っていただけますか?」 「え?・・・あー、はい」 カタカタカタカタカタカタカタカタカタ。 「ふぅ・・・あ、お待たせしました。何か御用ですか?柴田さん」 「あ、はい。あの・・・用と言いますか・・・ちょっと見ていただきたいものがありまして」 「はい?」 「えーっと・・・こ、これってかわいいですか〜?」 「あの・・・柴田さん」 「はい」 「実は今、私酷い疲れ目でして・・・」 「あ、それは大変ですねー。あまり無理なさらないで下さいね?」 「ありがとうございます・・・それでですね、ちょっと今目が霞んでまして・・・」 「はい」 「ですから、今のポーズよくわからなかったんですよ・・・すみません、説明していただけますか?」 「え?今のを・・・説明ですか?」 「はい。お願いします」
「・・・不倫はよくないですと断られました」 「近藤さん、真面目やからなぁ・・・」 「そういう問題?」 「やっぱり私には魅力がないんでしょうか・・・」 「そこんとこどうなん?真山さん」 「・・・何で俺に聞くの?」 「だってこの中で男、アンタだけやん」 「・・・私、魅力ないですか?真山さん」 「あるわけないじゃん」 「・・・やっぱり・・・私の魅力は万人向きじゃないんですね・・・」 「あーあ。柴田落ち込んだやんか。ホントの事言ったりぃや。真山さん」 「何言ってんの?俺は正直に・・・」 「・・・・・・じゃあ最後、最後は楽勝や。なんせ相手はアホやからな」 「アホの方ですか?」 「そ。アホの金太郎〜。アイツなら簡単にひっかかるやろ。童貞やし」 「童貞といいますと、金太郎さんは生娘さんなんですか?」 「男は生娘って言わんやろ」 「成る程。じゃあ生息子・・・?」 ばしっ 「童貞でいいじゃん。童貞で。ね?」 「はぁ・・・それもそうですね」 「まぁ、なんでもええやん。柴田最終決戦や!目指せ童貞キラーやで!」 「はい!!童貞キラー目指してがんばります!!」 「ほら、真山さんもなんか言ってやりぃな」 「ま、頑張れば?」 「はい!頑張ってきます!!いざ!!」 「頑張りー・・・って、ええの?真山さん」 「だから何が?」 「・・・意地張るのもたいがいにしときよ」
「金太郎さん」 「あ?なんや東大ちゃん。この崇高なワシと推理対決でもしようっちゅうこんたんか?」 「違うんですよ・・・ちょっと金次郎さんにご相談が・・・」 「金太郎やっちゅうねん。・・・で、なんや?このワシに相談っちゅうのうは」 「はい。金次郎さんを誘惑しに参りました」 「は!?何ぬかしとんねん。ワシが東大ちゃんみたいなんに誘惑されるわけ・・・」 「金次郎さん、これってかわいいですかぁ〜?」 「う・・・」 「金次郎さぁ〜ん?かわいいですか〜」 「か・・・かわええ・・・かも・・・東大ちゃん・・・」 「本当ですかぁ〜!これで私も悪女ですねー。ふふふ」 「と・・・東大ちゃん・・・ワシ・・・」
ばしっ
「お前さ、遊びでいたいけな童貞君を弄ぶなよ」 「いった〜い。あんまり叩かないで下さいよー、真山さん」 「だから、お前の馬鹿が治ったら叩かないってば」 「・・・気が済んだ?」 「え?」 「悪女気分、味わえましたか?オジョーサマ」 「はい!悪女気分満喫ですー」 「そ。じゃあ、終了ー。これ以上するとどっかの馬鹿が本気にするから、ね?」 「どっかの馬鹿って・・・ワシっすか?」 「お前、まさか本気にしてないよね?こんな小汚い女の誘惑」 「え?ま、まさか・・・本気になんてするわけないやないっすか・・・あはは・・・」 「だよなー。さすが京大」 「えー?じゃあ私の魅力って・・・」 「だから、ないんだって。ね?」 「はぁ・・・落ち込みます〜」 「まぁ、人には向き不向きがあるからね」 「・・・はぁ〜い・・・」 くくくと笑いながら、真山は柴田の頭をぽんぽんと撫でた。
「・・・では、私は私の得意分野で勝負します」 「得意分野?」 「捜査です。推理です。刑事魂で一生懸命突き進みます!」 「・・・は?」 「そうすれば私の王子様はきっと私を見つけてくれるはず!行きましょう、真山さん!!」 「だから何で俺?」 「待ってて下さいねー!旦那様ー!!」
「・・・で、なんやったんですか?さっきの東大ちゃん・・・」 「アンタマジでドキドキしたやろ?あの柴田に」 「そ・・・そんなわけないやないですか〜・・・姐さんまで」 「やっぱりアタシの思った通りやな」 「何がっすか?姐さん」 「真山さんでもヤキモチ妬くんやなーと思ってな」 「ヤキモチっすか?あの真山さんが?」 「しかもアンタみたいな童貞相手に」 「は?ワシにっすか?」 「いやー、ええもん見たわー」 「はぁ・・・」
「ま。真山さんも普通の男やったっちゅーことやな」
|