65:ペン

 

 

 

 

10時54分、真山さん左手親指の爪を切る。以後順番に爪を切っている。

何故だか楽しそうだ。

時々爪が飛んできて私に当たる。少し痛い。

 

11時12分、真山さん私の鞄から勝手にトランプを出して、トランプタワーを真剣に作っている。

少し机を動かしたら、すごい目つきで睨まれた。

・・・ここは逆らわない方がよさそうだと直感する。

すみませんとお辞儀をしたらその拍子に私の髪の毛がタワーに当たり、なだれを起こした。

真山さんは物凄い形相でこっちを睨み、私の頭を思いっきり叩いた。

涙が出るほど痛かったが、悪いのは私だし、良く見たら真山さんもちょっと泣いていたので、何も言い返せなかった。

そんなに大切だったんだろうか、あれ。

 

12時18分、昼食。真山さんはコンビニで買ってきたカツ丼を美味しそうに食べている。

私も、今日はなんとお手製のお弁当があるのだ。

(本当は真山さんの分も作ってきたかったんだけど、昨日さりげなくいるかどうか尋ねたら、思いっきりいやな顔をされたのでやめた)

私のお弁当を見た真山さん曰く「それ、お前が作ったの?・・・だろうね」

なんと、私のお手製のものだと見ただけでわかったらしい。

愛の力?・・・うふふふ。

ちなみに、味はなかなかのものだった。

特に、庭で摘んだ野草(種類までは断定できず)入りの玉子焼き。デリシャス。

今度真山さんにもつくってあげよう。

 

12時32分、真山さん食後の一服。

私は煙草の美味しさなんてわからないけれど、真山さんは本当に美味しそうに煙草を吸うと思う。

なので、煙草がちょっと美味しそうに見える。

昔、彩さんから頂いて吸ったことがあるが、あれのどこが美味しいんだと思うほど不味かった。

「慣れだよ」と真山さんは言ったけれど。不思議だ。

あ、そういえばセックスと似ているかもしれない。

慣れるまでは痛くて、慣れると気持ちいい。

帰ったら、早速真山さんに言ってみよう。

 

1時23分、真山さんは暇そうだ。

そして少し眠そう。あ、あくび。

内緒だが、私は真山さんのあくびをする時、鼻による皺が実は好きだ。

そして、真

 

 

「何書いてんの?」

真山の声に、柴田ははっと顔を上げた。

「・・・いえ?別に・・・」

「別にじゃないよ。今日登庁して来てから、お前ずっとなんか書いてるでしょ?気になんだよ」

「・・・お気になさらずに」

「なるよ。ちらちらちらちら俺の方見てなんか書いてたらさぁ」

「あ、気づいてました?」

「当然でしょ?・・・ちょっと見せろ」

「・・・お断りします」

「見せろ。どうせ、俺の悪口書いたんだろ?」

「悪口なんて書いてませんよ〜」

「じゃあいいじゃん。見せろ」

「だから、なんで命令形なんですか〜?」

「うるせぇ!見せろったら見せろ!!」

「嫌ですー!!見せませーん!!」

「ちくしょ、じゃあ俺も柴田の悪口書いてやる!!ペン貸せ、ペン!」

「ですから、悪口なんて書いてませんってばー」

「えーっと、『1月22日。柴田は今日も悪臭だ』」

「ひどーい!!お風呂に入ってないだけじゃないですかー」

「『入ってないだけ』ってなんだよ!入れよ!そこが重要なんだよ!!」

「えー、だって今の季節は寒いですから汗もかきませんし・・・」

「汗かかなくっても入るもんなの!普通はね?」

「え〜?じゃあ、真山さんは毎日入ってるとでも言うんですか?」

べしっ

「当たり前だよ!!」

「いったーい」

「うわ、臭ぇ!!叩いただけで俺の手まで臭い!!」

「え〜?そんなに臭いますかねぇ・・・」

「・・・最後に入ったの、何日前?」

「え〜っと・・・5・・・6・・・7・・・一週間ですかね?」

「ヤメテ!近寄らないで!!来ないでぇ〜!!」

「えー?そんなに嫌がらないで下さいよ〜。真山さん」

「馬鹿っ!ホントこっちにくんなって・・・タスケテー!!」

 

 

いつの間にか、ぺらぺらと柴田のノートを読む彩の姿が。

「で、姐さん何が書いてあったんですか?東大ちゃんのノート」

「・・・言われへんわ。柴田、アイツ・・・ポエマーかっちゅうねん」

「そうですか。柴田さんらしいというか、何というか・・・」

 

「あほらし。はよ定時来て合コン始まらへんかなー。アタシも男見つけな」

 

 

「真山さーん。逃げないで下さいよぅ〜」

「お前、わざとやってるでしょ?殺す、絶対殺す!!」

「えー?そんな物騒な事言うと係長が逮捕しちゃうぞ!」

「うわー!!ムカつくー!!」

「真山さんのハートをね・ら・い・う・ち。ぱっきゅーん」

「死ね!ばーか!!」

「やだもー、真山さん照れちゃって〜」

「・・・ねぇ、誰か助けろよ・・・」