57:鈍行列車
ふと、考える。 たとえば、自分の人生がこの先続くとして、今はどのあたりに来てるのだろう。 今までは、ほとんど考えなかったこんな事を、なぜ今更思うようになったのだろう。 それはきっと、暇になったからだ。 退屈な人生を俺は生きているのかもしれない。
「ねー真山さん真山さんあのビルなんですかね〜?」 「・・・・・・・」 「真山さん?寝てるんですか〜?絶対起きてますよね。ねー真山さーん」 「・・・・・・」 「真山さ・・・いたっ!!」 「うるせえんだよ!電車乗ってるときくらい寝かせて?ね」 「いったぁーい!!起きてるなら返事くらいしてくれてもいいじゃないですかぁー!!」 「起きてたんじゃないの。寝ようとしてたの。返事しないってことは返事したくないってことでしょ?察しろよ、馬鹿!」 「えーでも真山さんが寝たら私一人になっちゃうじゃないですかー。寂しいです。寝ないでくださいー」 「お前も寝ればいいじゃん。ね?」 「でも私、電車の中とかって眠れないんですよねー」 「嘘付け!床の上でも道路の上でもがーがー寝るくせに」 「ガーガーなんて・・・私いびきかきませんよー!!」 「そうだっけ?」 「え?掻くんですか?私・・・」 「・・・・・・・」 「え?ちょっと・・・黙らないでくださいよ〜。真山さぁん?」
嗚呼、本当に退屈な日々。 鈍行列車に揺られて、目撃者の証言を聞きにいくだなんて、聞いただけで欠伸が出るよ。
「ねぇ、真山さん」 「・・・あのさ、静かにしてって言わなかったっけ?俺」 「私たちって、傍から見るとどんな風に見えるんでしょうね〜?」 「・・・は?」 「婚前旅行に行く恋人同士とか・・・新婚旅行の夫婦とか・・・いや〜そんな・・・照れちゃいますね」 「何一人で赤くなってんの?普通に同僚でしょ?傍から見れば」 「そうなんですか〜?」 「歳だって結構離れてんじゃん。俺の方が上司に見えるんじゃないの?」 「せめて『友達以上恋人未満な二人』には見えないんですかね?」 「・・・なんだよ、その抽象的な表現」 「えー?素敵じゃないですか」 「ってかさ、一瞬で他人にそんな微妙な関係わかるわけないじゃん」 「じゃあ、やっぱり恋人ぐらいには思われたいですね」 「・・・何で?」 「なんとなく・・・そう思いません?」 「全然」 「・・・・・」 「第一さ、いちいちそう思われたら、やってらんないよ?聞き込みとか捜査とか」 「どうしてですか?」 「だって、聞き込みをする人に『こいつらデキてる』とか思われてみな?やりづらいと思わない?」 「そう・・・ですかね?」 「俺はヤダね。こんな女に欲情してるとか思われんの」 「欲情・・・なさるんですか?」 「してんじゃん。何言ってんの?今更」 「なんか、獣じみてますねぇ・・・」 「本能だからね、人間の」 「・・・なるほど」 「お前はしない?俺に」 「何をですか?」 「ん?決まってんじゃん。『欲情』」 「えーっと、時と場合によっては・・・」 「お、お前もするんだ」 「私だって、人間ですから」 「しょっちゅう?」 「たまにです!!」
嗚呼、下らない。下らない。 ちっとも先に進まない電車の中でする会話。
だけど、この退屈ぶりが最近自分では気に入ってるというのも本当の話。 鈍行の各駅停車の電車も、悪くないと思っている。
「ねえ、柴田」 「何ですか?」 「暇だからさー」 「はい」 「キスでもしとく?」 「え!?」 「・・・冗談だよ、馬鹿」
暇つぶしの相手が、傍にいるならね。
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