51:自意識過剰
それは、背筋をしゃんと伸ばさなければいけないと感じさせる様な。 それでいて、全身の力が抜けていくほど安心出きる様な。
神様は、不思議な感覚を私に与える。
神様、かみさま。 本当はいるはずのない、神様。
それは、心の中だけで、決して誰も見ることは出来ない。 本当に、見た人なんで誰もいないのだから、いない確率の方がずっと高い。
それでも、神様に頼る人間は、愚かですか?滑稽ですか?
助かるはずもないとわかっていながら、助けを求める私は、 きっと誰よりも愚かで滑稽な女なんでしょうね。
・・・まただ。
気持ちよく晴れた日、私は決まってこの土手を歩く。 カチコチに固められたアスファルトよりも、ずっと気持ちいいから。
お決まりの出勤コース。 それに慣れた頃、急に感じた。 振り返っても、誰もいない。
・・・自意識過剰ね。 ぽつりと呟いて、私はまた歩き始める。
いつもそうだ。 私は、後ろを気にしすぎている。 歩いてきた、ここまでの道。 前を見ることなんでいつも出来なくて。 後ろばかり気にして躓いたり、時には転んで怪我をして。 本当は、ちゃんと前を見たいのに。 後ろなんて気にせずに歩いて行きたいのに。 そう意識すればするほど、後ろを振り返ってしまう。 いいことなんて何一つなかったはずなのに。
前だけを見て、今を見て。 昔を忘れられたらどんなに楽だろうか。 それだけで、どんなに私は幸せだろうか。
わかってる、本当は。 私は、ちゃんと後ろを振り向かなければいけない事に。 中途半端に振り向くから、前にも後ろにも進めないんだ。 ちゃんと後ろを振り返って、決着をつけなければいけない。 そうでなければ、前を見て歩くことなんて出来ないのだ。
この道を歩く時に感じるものは、きっと神様の視線。 過去を忘れるなと戒めるために。 射抜くように、包むように。 私を見守っている神様が、警告してくれる。
本当は、土手の自然を感じる余裕なんてないくせに。 表面だけ取り繕って、平気なフリをする悪い癖。
本当に、あの頃から少しも成長していない。 情けなくて、その場にうずくまりたくなる。 けれども、それさえ出来ない、臆病な自分。
そうすると、またあの視線を感じる。 温かくて、厳しい視線。 私は、また歩き出す。
神様なんて、いないのだから 自分で勝手に創り上げても、いいんだよね?
道を歩く時、たまに私は黙って目を瞑る。 空を見上げる余裕なんてないけれど、肌に風を感じることぐらいは出来るから。
神様、かみさま。 その視線の正体を、勝手に神様と思ってもいいですか?
何もしてくれないくていい。 神様なんて、そんなものでしょ?
ただずっと、そこにいて。 居て、くれるだけでいい。
私を見てくれる存在が、この世に居るだけでも私はきっと生きていけるから。
例え、それが幻でも。
深呼吸をすると、綺麗な空気と道路から流れる濁った空気が肺を満たす。 綺麗なだけじゃない、私が生きている世界。
そうして、私はまた、日常に戻っていく。 振り向く勇気のないままに。
何かに、見守られながら。
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