50:贅沢

 

 

 

 

オレンジ色の夕陽がとても綺麗な夕方。

楽しそうに手を繋いで歩く母子。その後ろにはそれを見守る父親。

娘の顔は、その隣の母親とそっくりで、ほほえましい光景により一層温かさを加えていた。

 

「おーてーてーつーないでー」

「のーみちーをゆーけーばー」

「・・・・」

「ほら、次真山さんの番ですよ〜」

「は?何で俺?」

「ママの次はおとうさんの番ですよ〜」

「二人でやってて。俺はパス」

「ノリ悪いですね、真山さん」

「うるさいよ。そっくり親子で楽しくやってて?ね?」

「「はぁーい」」

 

「らんらららんら あひるさん」

「ガーガー」

「らんらららんら やぎさんもー」

「めぇぇ〜」

「ノリノリだね。双子かよ。お前ら」

 

「あっ」

その時、子柴田が石につまづいて転んでしまった。

「ああ〜!!大丈夫ですか〜?」

「どんくさい所までそっくり」

「あーんあーんあーん。いたいですー」

「すりむいたんですか?ママに見せてください」

「ままぁ〜」

「大丈夫ですよ。血はでてないですから。帰って、消毒しましょうね?」

「いたいよー。ママ〜」

「あー、よしよし。大丈夫ですからねー」

「うあーんうあーん」

「よしよし。・・・真山さぁん?」

「・・・何でお前まで泣きそうな顔してんの?」

 

真山がしゃがんで子柴田と目線を合わせた。

「なぁ。5つ数える内に泣き止んだら、俺が抱っこしてやるけど?」

子柴田が泣きながら真山のほうをチラリと見る。

「いーち、にー、さーん、しー・・・・」

「・・・ひっく。ひっく・・・おとーさん・・・」

「泣き止んだ?」

こくりと子柴田が頷く。

「おとーさん、だっこ」

「しょうがねぇな。よいしょっと」

「わー、良かったですねー。真山さんにだっこしてもらえて」

「うん!」

「はい、家かえるよー」

 

 

「寝ちゃいましたね」

「きったね。よだれたらしながら寝てるよ」

「・・・ふふふ」

「何だよ。気持ち悪い」

「真山さんって、子供の扱いお上手ですよね」

「だって、コイツお前と同じなんだもん」

そりゃ、親子ですから・・・」

「困って、泣いて、俺に抱っこされて、すぐ寝る。お前と一緒。楽勝だね」

「もう・・・」

柴田が赤い顔してむくれた。

 

「しかし、ほんとお前そっくりだね。ちゃんと俺の遺伝子も入ってんの?コイツ」

「入ってますよー」

「アレじゃない?お前、分身の術とかクローンとか変なワザ使ったんじゃないの?」

「もう!首の辺りとか、ツメの形とか真山さんにそっくりじゃないですか」

「・・・そうなの?」

「何か不満ですか?」

「いや?立派な奥さんと可愛い娘がいて何の不満もありません」

「うそくさいですね」

「ちっ。・・・ばれたか」

「もう!」

 

「・・・贅沢モノだよ、俺は」

「?何か言いました?真山さん」

「別に。・・・なんでもないよ」

 

どこにでもいる、平和な家族。

だけどとても贅沢な。

泣きたくなるくらい幸せな。

 

 

ずっと、この日常が続きますように。