49:ずっと
ずっと、夢を見ているんだと思っていた。 目の前で、紅く染まる貴方を。
自分の悲鳴さえ、遠くに聞こえて。 切られた頬の痛みなど、遥か彼方のものように思えた。
感じたのは、自分の心臓の音。 それから切り裂かれたような、胸の痛み。
涙はきっと溢れているんだろう。でもそれも感じない。 私が私じゃないようで、気が狂いそうだ。
けれども、目の前に横たわるこの人を刺したのはまぎれもなく「私」。
この夢から、早く覚めなくては。
ずっと、夢を見ていた気がする。 目の前に現れたお前を見ても尚。
記憶がないお前。 俺を見ても、何も言わないお前。
恨み言も、怒りも、例えば愛の告白も。 お前が俺に向ける言葉は、全て受け止める気持ちでいたのに。
俺の時間はまた、止まってしまった。 お前と出会ってから、少しずつ動き始めていたはずなのに。
だから、お前が目を覚ましたと知った瞬間、 ほら、やっぱりなという気分だった。
夢を見ていたんだ。 苦しい夢を。 お前が俺をわからない、悲しい夢を。
目を覚ましたのは、俺のほうだと。 血で真っ赤に染まったお前の顔を見て、そう思った。
そう、俺の時間はまた再び動き出したんだ。
「真山さん、おはようございます〜」 「お前また来たの?」 「はい!お見舞いのバナナです」 「・・・わかってんじゃん」
もう、夢は見ない。 ここが現実だという証が確かにあるから。
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