40:をとめ
「柴田、アンタの夢って何?」 「え?何ですか急に」 「ん〜?なんか『将来の夢』がないとおもろい人生になれへんねんて。雑誌に書いてあったわ」 「そうなんですか?夢かぁ…ちなみに彩さんはどんな夢をお持ちなんですか?」 「アタシ?アタシは決まってるやんか。『玉の輿』や!金持ちのエエ男捕まえるで〜!!」 「あ、私と一緒ですね。うふふふふ」 「は?アンタも玉の輿、狙っとんの?」 「玉の輿と言いますか…『お嫁さん』ですね。うふふふふ」 「…あっそ(聞いた私がアホやったわ)」
「参考までに聞くけど、アンタどんな男がタイプなん?」 「タイプ…そうですねぇ」 「あれやろ?攻撃的とか、いじめっ子とか、白い靴下とかそんな感じやろ?」 「…なんですか?それ?」 「アンタのタイプやんか〜。そうやろ?な?」 「違いますよ〜。私のタイプは、優しくて、思いやりがあって、大人の男の人で…」 「アンタさぁ、今日日の中学生でももっと現実的なタイプを言うで。そんな出来た男、いるわけないやん」 「何言ってるんですか?いるじゃないですか〜。うふふ」 「へ?どこに?」 柴田がもう一度うふふと嬉しそうに笑った。
「しばた〜。もうとっくに定時過ぎてるよ〜。帰るよ〜」 トイレから戻ってきた真山が、ダルそうに柴田に声を掛ける。 「あ、真山さん。帰る前にちょっと気になることがありまして…」 「却下」 「え?何がですか?」 「行かないよ?捜査になんか絶っっ対行かないよ?定時過ぎてんじゃん。ね?」 「捜査じゃないですよ〜。ちょっと目撃者の方にお話聞くだけです〜」 「それを捜査って言うの!行きたいなら一人でいけば?俺は帰るから。さよなら〜」 「私だけじゃ道に迷っちゃって今日中にお話聞けなくなるんですよ〜。真山さ〜ん、お願いしますぅ〜」 「ヤメテ!離して!!」 「嫌です。真山さんが行くって行ってくださるまで離しませんからぁ〜。ねぇ真山さぁ〜ん」 「何だよ!甘えた声だすんじゃないよ。気持ち悪ぃ」 「いつもはもっと声出せって言うくせにぃ〜」 彩のにやりと笑った目と真山の焦った目が合ってしまう。 「お、お前何言ってんの?頭大丈夫?発熱?水虫?魚の目?イボコロリ?」 「お願いしますよ〜。捜査一緒に行って下さいよ〜」 「…場所どこ?」 「えっと、新宿です!」 「…じゃあ、30分で終わらせてメシ奢れよ?」 「はい!」 「カツどんとかじゃなくって、寿司だぞ、寿司!」 「はい!真山さんのお好きな玉子焼き、いくらでも食べてください!」 「回ってるやつじゃなくって、カウンターのだぞ?」 「もちろんです!この間彩さんから教えていただいたとっておきのお店にご案内します」 「…よし。じゃあさっさと行くぞ」 「はい!…やっぱり真山さんって優しいですね」 「は?お前また馬鹿になった?」 うふふ。と柴田はまた嬉しそうに笑った。
真山が気味悪そうに眉間に皺を寄せて、首を傾げる。 そして、彩に「どうしたの?コイツ」と聞いたが、彩もよくわからなくて首を捻った。 柴田だけが嬉しそうにニコニコと笑っていた。
「まぁいいや。行くよ、柴田」 「は〜い」 まだ腑に落ちなそうな真山が、ドアの方に向かう。 そのあとをとたとたとついて行こうとした柴田が、くるりと彩の方を振り返った。 「ね、彩さん。いるでしょ?私の理想の人」 「は!?」 ぽかんとする彩に、柴田が両目ウィンクをして満足そうに真山と一緒に立ち去った。
「何や?あのこの目には真山さんが優しくて、思いやりがあって、大人の男に見えるわけ?」 彩の目にはどう頑張っても真山は、自己中で、我儘な子供の男にしか見えない。 「恋する乙女は恐いわ〜」 誰もいなくなった弐係で、彩は一人首を傾げるのであった。
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