4:永遠
柴田と真山がいつものように捜査に行った帰り道。 二人は、小さな教会の前を通った。
そこでは丁度式が終わった直後のようで、教会から出てくる新郎新婦を友人たちがライスシャワーで祝っている所だった。
「真山さん、見てください!結婚式ですよ〜」 「あー、はいはい。いいからお前はよそ見すんな。また迷子になったら探すの俺なんだからさ」 「花嫁さん、とてもお綺麗ですね〜」 「ねぇ、お前人の話聞いてる?」 「結婚といえば、人生の一大イベントですよ〜。愛する人と永遠の愛を誓い合う…ああ!トレヴィア〜ン!!」 「あーもー、しーらね。お前置いて先に行っちゃうよ?柴田〜?」 真山がそう言って後ろを振り返ると、既に柴田の姿はなかった。 「も〜、柴田ぁ〜?」
15分後、ようやく真山が見つけ出した柴田は、何故か手に花束を持っていた。 「あ、真山さ〜ん。どこに行ってらしたんですか〜?」 ばしっ 「それはこっちの台詞、ね?お前、何突然いなくなってんの?」 柴田がいててと頭をさすりながら言った。 「ちょっと結婚式見に行っていただけです〜。ほら、ブーケまでもらっちゃったんですよ」 柴田が手にしていた花束は、どうやら花嫁が投げたブーケらしい。 「あのさぁ、普通花嫁のブーケって花嫁の友達とかが争奪してやっともらえるもんじゃないの?部外者のお前がもらっちゃっていいもん?」 真山が、煙草を咥えながら柴田に言った。 「え?そうなんですか…?どうしましょう?」 「俺に聞くなよ」 柴田が不安そうな顔でブーケをじっと眺めていたが、すぐに顔を上げた。 「このブーケが私のところに来たんだから、しょうがないですよね、うん」 「うっわ〜、お前自己中だね。何その勝手な理論」 「だって、本当なんですよ〜。このブーケが、まるで私にもらって欲しそうな感じで、こっちに飛んできたんです〜」 「はいはい、お前そろそろ休んだ方がいいんじゃない?疲れてんねー」 「もういいです!信じてくれないのなら!!」 柴田が、頬を膨らませて子供のように怒っている。 真山は、その顔を見て楽しそうに笑った。
「ねぇ、真山さん、知ってますか?」 柴田が嬉しそうに真山に尋ねた。 「何が?」 真山は柴田の少し前を煙草を咥えながら歩いている。 「花嫁のブーケをもらった人が、次に結婚するんですよー」 「あっそ。そんなもん迷信でしょ?迷信」 「もう、すぐに馬鹿にする〜」 そう言って、柴田が少しすねようと思ったとき、真山が急に後ろを振り返った。
「何?お前結婚すんの?」 柴田は、どきりとした。 自分が真山を好きなことは、真山も知っている。 もしかしたら、これってプロポー・・・
「あのさ、結婚式に俺呼ばなくてもいいからな」
「は!?」 「だから、お前なんかにご祝儀払うの、勿体無いじゃん。俺呼ばないでね、柴田サン」
真山のからかうような口調に柴田は、夢から醒めた気がした。 「もう!いいんですか!?私、どっか真山さんの知らない人のところにお嫁にいっちゃいますよ!?」 「いいんじゃない?オメデトー、柴田」 「真山さんよりずーっと若くて、かっこよくって、優しい人と結婚しちゃいますからね!?」 「あっそ。じゃあ、その俺より若くて?かっこいい?やさしーい旦那様に警視庁まで連れてっていってもらえば?俺はもうお前なんか置いてくからね」 真山が、急に不機嫌になってくるりと前を向き、すたすたと柴田が追いつけないような速さで歩き始めた。 「真山さん、待ってください!」
「真山さーん、もしかして怒っちゃったんですか〜?」 「……」 すたすたすた。真山は歩みを止めない。
「冗談ですってば〜。真山さんより若くてかっこよくって優しい人なんかより、真山さんのほうがいいです〜」 「・・・…」 後ろからでは、真山の表情が少しも見えない。
「もう〜、真山さん、こっち向い…」 そういいかけて、柴田が何かにつまずいて転んだ。 その音を聞いて、ようやく真山が振り返った。
「何やってんの?」 「あ、ブーケ一本折れちゃいました〜」 「ブーケよりもさ、どっか怪我してないわけ?」 「あ、それは大丈夫です。あはは」 「あははじゃないよ、馬鹿」 大きくため息をつくと、真山が柴田のほうに手を差し出してくれた。 柴田は、その大きな手を掴んで立ち上がった。
「俺だって、お前みたいなどんくさい上司の面倒見るよりも、お金持ちのオネーチャンと結婚して逆玉にのってやる」 真山が、少しすねたように呟いた。 「あ、真山さん。私の家、お金持ちなんですよ〜。よかったですね。逆玉で」 「誰がお前なんかと結婚するって言った?」 真山が、顔をしかめた。
柴田は、ブーケの中からさっき折れた一本の花を取り出し、真山のスーツの胸ポケットに挿した。 「花嫁のブーケ、一本わけてあげます」 「いらないよ」 「もらってください。きっと、幸せになれますよ」 「それって、四葉のクローバーじゃないっけ?」 「いいんです、『どうせ迷信』なんでしょう?」 柴田が、にこりと笑う。 その笑顔を見て、真山も少し笑った。
柴田が真山の腕にそっと自分の腕を絡めた。 いつも嫌がる真山が、何も言わなかった。
「えっと、じゃあいつウチに挨拶に来てくれますか?」 「何だよ?勝手に結婚の話進めてるんじゃないよ!」 「いつがいいかなー?やっぱり大安がいいんですかね?」 「知らないよ!ってか、やめて!ね。その話、やめよう?」 「あ、ウチの母なら大丈夫です。話がわかる人ですから」 「そうじゃなくって、当の本人が話わかってないんですけど?」 「やっぱり、教会とかでやりますか?それとも神社?あ、でも真山さん和服似合いそうですよねー」 「ね、怖いんだけど?何の話??」
腕を組みながら、永遠にケンカしている二人は 柴田がブーケを持ち、真山がそのうちの一輪の花を胸に挿しているため、 「風変わりな黒い服を来た新郎新婦」に見えてしまうと 偶然目撃した彩に指摘されるのであった。
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