37:冷凍庫 

 

 

 

 

夜中、独りで晩酌をする。

…淋しいけど、彼氏のいない(彼氏モドキはぎょうさんおるが)女の一人暮らしなんてそんなもん。

しかし、まだビールは買い置きがあるのに、つまみがなくなってしまった。

「くっそ〜、いか君もっと買うたったらよかったわ〜」

しまった。最近独り言が多い…このままではまっしぐらな気がするわ〜。はよ一人に決めんとな〜

そんな事を考えながら、冷蔵庫を開ける。

あるんは、ビール、卵2個、マヨネーズ、ケチャップ、マスタード、わさび…

アタシにマヨネーズちゅっちゅせいってことか!?

なんもあらへん。腹立つわ〜。

 

がちゃ。

冷凍庫を開ける。

普段はめったに開かない冷凍庫。

あまり期待せずに、ごそごそと漁る。

 

 

あるものを見つけてぴたり、と手が止まった。

茶色の、綺麗にラッピングされた小さな包み。

「なんや、これまだあったんかいな・・・」

懐かしくてつい手にとってしまった。

 

それは、何年か前のアタシの気持ち。

 

包みを開ける。

中にあったのは、包んだ時そのままの形を残すチョコレート。

癪な事に、ちょっと上手くいかなかったところまでそのままだ。

 

何年か前、あの人に渡そうとして、どうしても渡せず、そっとしまった気持ち。

 

しゃーない、これでもアテに一杯いっとけっちゅうんか?

そのチョコは、手に取るとひんやり冷たい。

 

胸にしまったまま、凍って本人にさえ忘れられてた気持ち。

 

…無理やんな。

いくら冷凍されてるといっても、もう何年も前すぎて腐ってしまっているだろうから。

 

ずっと伝えられなくて、そのまま朽ちてしまった気持ち。

 

もう、食べれない。

食べてもらえない可哀想なチョコレート。

 

あの人に知られもせず、ずっとここで静かに時を過ごしていた気持ち。

 

もう、捨ててしまおう。

 

 

ゴミ袋に捨てる。

ただそれだけの行為なのに、それを酷くためらってる自分がいた。

 

 

胸の奥が、きしりと痛む。

 

 

「…ばいばい…」

 

やっと捨てた時に、言葉とともに涙が一筋流れた。

 

 

 

 

いかん、酔いが醒めてもうた。

こんな時は斑目でも呼び出してとことん飲もう。

 

アイツに、ちょっとだけ甘えてしまおう。

 

 

 

 

 

・・・ばいばい、真山さん。