3:嘘
レンタルビデオ屋で、ふと手に取ったビデオ。 主演の男が好みなのでつい、借りて帰ってしまった。
そのビデオは、盲目の女とそれを騙すホストの話で。 陳腐な話だと、馬鹿にして見始めたものの、最終回あたりになると涙が溢れそうになった。
けれども、一緒に見ている斑目には涙を見られたくない。 必死にこらえた。
そのドラマのラストシーン。 「嘘をつく声で、その嘘がばれる」
「かー!くっさいなぁ〜!声で嘘がばれるワケないやんなー」 アタシは、感動していることがばれたくなくて、誤魔化すような大声で叫んだ。 「そうか?なかなか核心をついた台詞だと俺は思うが」 隣にいる斑目が、感動したわけでも退屈しているというわけでもなさそうに淡々と答えた。 「何?それじゃあアンタは、嘘をつく声で嘘がわかるとでも言うん?」 馬鹿にされたような感じがして、斑目をキッと睨む。 「…まぁ、彩の嘘くらいなら解ると思うが…」 かっちーん。コイツアタシにケンカ売りやがった。
「じゃあさ、アタシが今から言うこと、本当か嘘か当ててみぃよ」 「わかった。やってみよう」
こうして、アタシたちの下らない勝負が始まった。
「アタシは昨日合コンに行った」 「本当だ」
「さっきの餃子、本当はアンタより一つ多く食べてた」 「本当だ。…それは俺も数えていた」
「この間、賞味期限切れた牛乳をアンタに飲ませた」 「本当だ…っていつの話だ!?」
「この間自分で買ったちゅーとったヴィトンのカバン、あれ合コンで知り合ったオヤジにかってもらったやつだった」 「本当だ…その男とは何もしてないだろうな…?」
「ふー、今のところ全問正解。やるやないの、アンタ」 「何問か、引っかかるものがあったが…?」 「まーまー、気にせんといて。ゲームやから」 「・・・」
「じゃあ、最後の問題。気合い入れて聞きよ!?」 アタシは、すうっと息を吸い込んで、斑目の目をじっと見つめた。
「アタシは、まだ真山さんの事を愛している」
斑目が、びくりと一瞬緊張したのがわかった。 けれども、斑目は決してその目をアタシから離さない。 …そういう男だ。
「どうしたの?嘘かホントかわからへんの?」 からかうように、挑発するようにクスリと笑う。 斑目は、表情を変えずにただじっと、アタシの目を見つめていた。
「じゃあ、質問変えてアゲル」 座りなおして、斑目の方に体ごと向きなおす。
そして、斑目の首に腕を回して、軽く微笑んだ。 「アタシが好きなのは、アンタだけ。嘘か、ホントか?」 斑目が、そっとアタシの背中に腕を添えた。 「それは、間違えなく本当だ」 あの人とは違う、でも低くていい声が体に響いた。
「自惚れんといて、って言ったやん」 「お前の声が、嘘じゃないって言ってるんだよ」
クスリと笑って、斑目の唇にそっと自分の唇を重ねた。 大丈夫。アタシの心の真ん中にいる男は、アンタだけだから。
…端っこに真山さんもちゃんといるけどね?
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