28:娘
最近、娘がウチに帰ってこない。 『最近』というのは語弊があるかしら? 『いつも帰ってこないけれど、最近は特に帰ってこない』が正しいのかしらね?
そう、昔から純はあまり家にいない子だった。 本やテレビで見た知識を実際に検証するのがとても好きな子で、 しかもひとつのことに集中すると他の事は何も見えなくなる。 純は、そんな子だった。
純が何かに一生懸命になっているとき、私には何も出来ない。 ご飯を食べろといっても、お風呂に入れといっても生返事ばかり。 本人が納得しなければ先に進めない子らしい。
私に出来ることは、彼女が『ただいま〜』と帰ってきたときに 温かいご飯とお風呂を用意してあげること。 彼女が還ってくる場所を用意してあげること。 ただ、それれだけ
それでも最近は、どうやらこの家のほかにもあの子が「還る場所」が存在してるようで。 たまに還ってくると綺麗になっていく娘に、ついつい目を細めてしまう。
『純、あなた・・・お付き合いしている人でもいるの?』 「隠し事はしても構わない。けれども嘘はつかないこと」それが我が家の決まりごと。 けれども、隠そうとも嘘をつこうともせずに、赤い顔でこくりと頷いた娘を見て、 「ああ、間違ってなかった」と嬉しくなった。
純、思いっきり人を愛しなさい。 その人をどこまでも信じなさい。 例え、どんな状況になっても、その人の手を離しては駄目ですよ。
お母さんはあなたを、そしてあなたが選んだ人を信じているから。
でも、疲れた時は、そっと還ってきなさい。 たまには、私に顔を見せて。 泣きたいときは、ここで泣けばいい。
けれども、あなたはそんな必要もないくらい、その人に愛されているみたいね。 笑顔も、泣き顔も、疲れた顔も。 見せることの出来る人にめぐりあえたのね。
おめでとう、純。 どうか幸せに。
・・・純のこと、よろしく頼みましたよ?真山さん。
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