19:寝汗
「・・・ん・・・」 目が覚める。 窓から入ってくる明かりが眩しくてゆっくりと目を開けた。 見慣れている、いつもの天井。 しばらくぼんやりと眺めて、それからやっと煙草が欲しくなり起き上がる。
ぐに。 あ、やべ。なんか踏んじゃった。 隣を見ると、女が一人眠っていた。 ああ、そういえばそうだったなと思い出し、女を起こさないように静かにベッドを出た。
その辺に投げてあったパンツとスエットを適当に履いて、煙草を吸う。 チラリとベッドで横になっている女を見る。 蒸し暑い気候のせいで、寝汗をかいていた。
手の甲で、額の汗を拭ってやる。 女がうぅんと小さくうめいた。 汗で張り付いた髪を掬って、整えてやる。 頭を撫でると、女がかすかに笑った。
いい夢でもみているんだろうか? 煙草を咥えたまま、寝ている女の隣に座った。
頬をつついてみる。 ぷるんと揺れて、気持ちいい。 長い睫毛。なぞってみる。 唇。厚くなく、薄くなく、とても形が綺麗だ。 そして、唇を彩るようにあるホクロ。 実はこれが一番好きだ。 指でなぞり、キスをする。
「・・・まやまさん・・・?」 「あ、起きた?」 「びっくりしました〜」 「何が?」 「・・・だって、真山さんの顔がすごい近くにあったものですから・・・」 「いいじゃん。チューくらいさせてよ」 「え?し、してたんですか?」 「うん。つい出来心でね〜」 「出来心って・・・」 くくくと笑って、ベッドから立ち上がる。
手にしていた煙草を吸いながら、灰皿を取りに行く。 柴田がシーツの中でもぞもぞしている。 「真山さーん」 「何だよ」 柴田の声に、振り向かずに答える。 「私の服、取ってもらえますか?」 柴田の方を振り返った。 「何で?」 「何でって・・・恥ずかしいじゃないですかー」 柴田はすっぽりとシーツに包まっていた。 「いいじゃん。俺しかいないんだし?」 「そういう問題じゃあ・・・真山さんだって服着てるじゃないですかー」 「ん?じゃあ、脱ごっか?」 脱ぐ気はないけれど、スエットを脱ぐフリをした。 「いいです、いいです」 柴田がぶんぶんと首を振る。
灰皿に短くなった煙草をぎゅっと押し付けて、またベッドに近づく。 「それにさ、どうせまた脱ぐハメになるんだから、着なくていいんじゃない?」 「え・・・?こんな朝からですか?」 柴田の顔が赤く染まる。 想像通りの柴田の反応に、ちょっと満足した。 「バーカ。何ヘンな想像してんの?」 鼻を軽くつまむ。 「いてっ・・・違うんですか?」 「あ、がっかりしてる」 「してませんよ〜」 「嘘付け」 「嘘じゃないです〜。じゃあ、何なんですか?」 「お前、そんなに寝汗かいて気持ち悪くない?」 「そういえば・・・」 柴田が、額の汗を指ですくった。 「頭、これ以上臭くなっちゃお嫁にいけないでしょ?風呂はいんな」 「あ、はーい」
「・・・真山さんは?」 「え?」 「真山さんは、お風呂、いいんですか?」 「何?一緒に入りたいの?」 「いえ、真山さんが入るならどうぞお先に・・・」 「・・・一緒に入りたいんでしょ?」 「違います」 「意地張るなって」 「別に張ってませんってば!」
にやりと笑って、柴田の体に腕を回す。 「真山さん?」 「よっと」 柴田の体をシーツごと持ち上げる。 「キャッ!」 「はーい、風呂入ろうね〜」 「降ろしてください〜」 「ダメ。風呂に直行便だから」 「真山さぁ〜ん」 「大丈夫、いっぱーい可愛がってやるからさー」 「ヤダぁ!ちょっと・・・おろしてくださいってばぁ〜」 「馬鹿だねー。俺は嫌がってる方が燃えるのに〜」 「真山さぁぁ〜ん」
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