19:天狗
柴田がまた失敗をした。 ・・・いや、正確には失敗ではなく、証拠不十分なのにとある弁護士を犯人呼ばわりし、猛抗議をされたらしい。
そんなわけで柴田とそのお守り係である俺は、捜査一課の腰巾着君に呼び出しをくらった。
「柴田、お前なぁ・・・ちょっとくらい事件解決してるからっていい気になりやがって」
・・・おいおい、「ちょっとくらい」?一件も自力で事件解決してないあんたには言われたくねぇよ。
「・・・すみません」
柴田、お前も謝んなくていいよ。 どうせ、このおっさんストレス溜まってるだけだから、相手にしなくていいの。ね?
「天狗か?柴田係長は天狗になってるのか!?ああ!?」
うわー、うざってー。 撃っていい?ね、ばきゅーんって撃っていい? というか蜂の巣? あー、法律守るってかったりーなー。
「・・・本当に・・・申し訳ありませんでした」
おーい、なに泣いてんの? 泣く事?お前間違ってるわけじゃないでしょ? これから証拠探しゃーいいじゃん。ね?
「泣いて済むならなぁ、警察いらないんだよ、柴田弐係長!!」
うるせぇよ、腰巾着。 今までコイツが犯人間違った事ある? 黙って見てろよ。 信じてやれよ。 コイツはいつも真実を見抜いてるんだよ。正しい真実ってヤツを。
「・・・すみません・・・」
あ〜あ、コイツ完全に泣いてるよ。 どーしてくれるんだよ?林田。こいつ慰めんの俺だよ? アンタ知らねーだろうけどさ、大変なんだからな。 感情を表情に出さないからわかりにくいし。 落ち込んでるのか、何にも考えてねーのかわかりずれーし。 あー、今夜の俺すっげー大変。頑張れよ、俺。
「・・・あー、もういい。お前らさっさと帰れ」
やっと終わり?帰っていいの? おーい、柴田帰るよー? しーばーたー?
「・・・失礼します」
何?お前まだ泣いてんの? ああもう、面倒臭ぇなぁ。 ちょっとこっちおいで?お嬢さん。 「え?」じゃねーよ。いいからさ、こっち来いって言ってんの。 食いやしねえって。ここが職場な事くらい俺だって知ってます。 あれ?何?何残念そうな顔してんの? ムキになる所が怪しいんだって。 「意地悪」?違うよ。お前がそうさせてんの。 俺はいつも優しいでしょ? ・・・何その顔。 ちょっとこい。マジで。 逃げんなって。はい、つかまえたー。 ぐしゃぐしゃぐしゃぐしゃ。 わー、お前やっぱ悪臭。 昨日風呂入った?・・・やっぱり・・・ だから言ったじゃん。うち来る?って。 え?・・・別に寂しくねえよ。お前がいないごときで。 あーあー。なんだよ。そんなんで泣いちゃうの? しーばーたー。冗談だって。 お前頭いいんだろ?それくらい見抜いて欲しいもんだね。 鼻出てるよ?鼻。 ん?何?俺がティッシュなんて持ってると思う? そうじゃなくって?・・・だからー、ここ警視庁。仕事場。税金で建てられた公共の場。 不謹慎でしょ?不謹慎。 ・・・どうしても? ってかさー、お前いつの間にそんなにねだるの上手くなったの? ん?なんでもない。気にすんな。 あー、わかったよ。はいはい。 一回だけだよ?続きは帰ってからねー。
ちゅ。
ねぇ、過去のハンザイシャの皆さん。 どうせコイツがそのうちあんたたちのこと追い詰めると思うからさ、今のうち自首してこない?
それから、これから犯罪をしようと思ってるヤツら。 お願いだからさ、どうせ犯罪犯すならもっと簡単にやって? トリックとかアリバイとかいらないヤツで一つ宜しく。 捜査一課の腰巾着でもわかる簡単なヤツ。
別に俺が刑事だからとか、世の中から犯罪がなくなれとかそういうんじゃなくってさ。 コイツがヘンな事で悩んで落ち込むのを見たくないからさ。
ね?わかるでしょ? 全ての理由は簡単で単純。
大事なやつを、泣かせたくない。 それだけなんだってば。
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