15:時計
斑目が、また時計を見た。 ・・・これで5回目やんか。
アタシは大袈裟に斑目を睨んだ。
今日は久しぶりに二人で会うてるのに。 斑目はさっきから腕時計ばかり気にしてる。 せっかく友達が上玉の合コンあるって誘ってくれたのに わざわざそれを断ってまで、アンタと食事しに来てやったのに 何なん?この態度は!
・・・おもしろくない。 「すいませーん。おニイちゃん、生中一杯追加ねー。」 「はい!よろこんで!」 むかついてもう一杯、追加してやった。 「・・・彩、もうその辺にしておけ」 斑目が、めずらしく私のほうを見たと思うたら、説教や。 「アンタには関係ないやろ?」 思わず、冷たなるのは当然やろ? 斑目が、困ったような顔をして、また時計を見た。
「・・・六回目」 つい、口に出していってもうた。 「何がだ?」 斑目が、眉をひそめて私の顔をじっと見る。 なんや、コイツ解ってへんのかいな。 余計ムカツク。
すっと斑目の腕を取り、さっきから目障りだった時計を外した。
「な!何するんだ!彩」 妙に慌てる斑目がこれまた気にいらない。 「あんたさぁ、何なん!?さっきから」 「・・・何が?」 「何がじゃないやろ?さっきから時計ばっかりチラチラ見て・・・」 「・・・俺が気にしてないと終電逃すだろう?」 終電〜?何言ってんの?コイツ。 今日は金曜。花金や。 花金に女誘っといて終電までに帰らそうとする馬鹿がどこにおんねん!! アタシの勝負下着が泣いてしまうやんか!!
斑目に突っかかろうとしたその時やった。 「・・・深夜のドラマ再放送。楽しみにしているんだろう?」 斑目の、どこかのんきな声にあっけにとられてもうた。 「は?ドラマ?」 「昨日言ってたじゃないか。今深夜でやっているドラマが面白いって」 ・・・そんな事言ったかな? 自分でも覚えてへん。そんな些細な事をコイツは覚えていたって言うんか?
急に勢いのなくなったアタシの顔を、斑目は心配そうに覗き込でくる。 「彩?どうかしたのか?」 「・・・別に」 時計にヤキモチを妬いて、斑目の優しさに気付かなかった自分に少しムカついた。
「・・・終電はもうすぐだろう?もう帰るぞ」 「嫌や」 「彩、だってドラマの再放送・・・」
「アンタなぁ、今日は金曜日!終電でアタシ帰らせてええの?」 「え・・・?」 「明日仕事休みやねんけどな?」 「・・・ドラマ、見なくてもいいのか?」 「ドラマとアンタ、どっちが大切やと思う?」 「ドラマか?」 「・・・アホ」 小さく笑って、斑目の腕に時計をはめる。
「お待たせしました!生中です!」 店員のおニイちゃんが、元気よく飛び込んでくる。 「お、ありがとありがと。・・・アンタもなんか飲むやろ?」 今日ハ帰ラナイヨネ?と、誘う風に斑目のほうを見た。 「・・・生中、もう一つ」 斑目が少し照れくさそうに答えた。 「はい!よろこんでー!」 店員の声がアタシの気持ちを代弁してるみたいで、ちょっと笑った。
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